昼下がりのこと。魅月がふわりと昼寝から起きてきて、開口一番こう言いました。
「あれ? おれ、一度リビングに来なかった?」
もちろん来ていません。私はずっとリビングでパソコンをしていましたし、階段を下りてくる気配もありませんでした。
「来てないよ」と答えると、魅月は少し困った顔で続けました。
「夢……なのかな。リビングに来て、また上に戻って寝なおしたんだよ」
夢にしては妙に現実的な動線。寝室とリビング、そして私のパソコン。まるで“意識だけが歩いた”ような感覚でした。
◆ 私自身の幽体離脱体験
実は私、高校生の頃に一度だけ幽体離脱をしたことがあります。
部活のみんなが「散歩行ってくるー。月夜どうする?」と声をかけてきた日。私は眠気に負けて「寝てる」と答えました。
でも心のどこかでは、「行きたいなあ」と思っていました。
気がつくと、私は天井近くからみんなを見下ろしていたのです。
その瞬間、霊感が一番強い同級生が私をちらりと見上げました。完全に“見えている”目でした。
私は思わず「ヤバ」と心の中でつぶやき、慌てて体に戻ることを念じました。
戻ったあと、散歩から帰ってきた同級生にこう言われました。
「お前、フラフラ浮いてたやろ」
怒られました。すみません。当時の私は覚醒したばかりで、力も存在も本当に不安定だったのです。
◆ 祖母が語った“力”の話
幽体離脱とは直接関係ないのですが、思い出す話があります。
私の祖母が、真言宗派のお坊さんにこう言われたそうです。
「あんたの孫は力が本当に強い。もったいない。修行させてみないか」
当時の私は高校生。煩悩の塊で、修行なんてまっぴらごめんでした。
でも今思えば──しておけばよかったなと少しだけ思います。
◆ 幽体離脱は“疲れ”と“願望”の隙間に起きる
幽体離脱は、どうやら
- 疲れているとき
- やりたいことがあるのに体が動かないとき
そんな“心と体のズレ”が生まれた瞬間に起きやすいようです。
魅月の「リビングに来た気がする」という感覚も、もしかしたらその隙間に生まれた小さな離脱だったのかもしれません。
◆ みなさんも、どうかお気をつけて
幽体離脱は珍しい現象ではありませんが、心身が弱っているときに起きやすいのも事実です。
もし「体が寝ているのに意識だけが動く」ような感覚があったら、まずはゆっくり休むことをおすすめします。
異界はいつも静かにこちらを見ています。けれど、足を取られないように──どうか気をつけて。

