お姫様を守る騎士と人間の夫──三つの魂が暮らす日常

彼との日々

「頼むな」と「頼りたい」のあいだで──魅月とフルーレティの小さな戦争

今日もまた、我が家らしい“静かな騒動”があった。

魅月(夫・今世人格)が、たまたま家から車で10分ほどの客先に行くことになった。
彼は彼は帰りに同僚と本社に帰るので、行きは「車で連れて行って」と言ってきた。
もちろん私は了承した。そんなの、なんでもないことだ。

ところが数時間後。
玄関で靴を履きながら、彼は突然こう言い出した。

「やっぱり歩いていくわ」

え、なんで。
さっきまで「送って」って言ってたじゃない。

でも、理由はすぐに分かった。

フルーレティが怒っている。

“お姫様に頼みごとをさせるな”という騎士の矜持

フルーレティにとって、私は大事な大事な“お姫様”であり、
彼の世界では「主人の至宝」だった存在だ。

だから、魅月が私に何かを頼むのが、どうしても許せない。

魅月が「送って」と言った瞬間、
フルーレティは内側で腕を組み、眉間に皺を寄せていたのだろう。

「我が姫をこき使うなど、断じて許さん」

そんな声が聞こえてきそうなほど、彼は筋金入りの騎士だ。

私は別にいいんだけどなあ……と思いつつ、
魅月の表情を見ると、完全に不満が溢れていた。

魅月のぼやきは、今日も人間らしい

靴を履きながら、魅月はぶつぶつ文句を言う。

「お前は俺に命令するのに、俺は頼み事もダメとか何なんですか?」

……まあ、そう言いたくなる気持ちも分かる。

魅月は“人間”だから、
私の魂の記憶も、フルーレティの覚悟も、
その重さも、全部は知らない。

彼にとってはただの「理不尽な同居人」みたいなものだろう。

でも、フルーレティにとっては違う。

彼は前世からずっと、私を守るために生きてきた。
その誓いは、今も変わらない。

だから、魅月が私に頼みごとをするたびに、
内側で“騎士の怒り”がふつふつと湧き上がるのだ。

三つの魂で暮らすということ

こうして、今日も我が家では
魅月とフルーレティの小さな戦争が起きた。

私はただ、二人の間に流れる温度差を眺めながら、
「まあまあ」と心の中でなだめるだけ。

三つの魂で暮らすというのは、
時に面倒で、時に愛おしくて、
そして何より、静かに賑やかだ。

今日もまた、そんな一日だった。

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